石井先生との出会いと漢方
石井正光教授の御定年退職に際し、心よりお祝い申し上げます。
石井先生と私の最初の接点は、私が研修医2年目に入ろうとしていた昭和52年に、先生が生理学の大学院を修了されて皮膚科学教室に助手として入局された時でした。
当初の印象は非常に理論派の学者といったイメージで、私とは随分違う世界の先生に思われました。しかし、夏の医局旅行でいろいろお話する機会があり、一気に親しくなっていきました。
先生は患者さんにも思い入れが強く、難病であってもできる限りいろいろな手を尽くそうとされる意気込みを強く感じておりました。
そして、乾癬性紅皮症の入院患者の主治医になられた時、漢方治療を取り入れたい旨を私に提案され、早速京橋で開業されておられた漢方大家の故・山本巌先生のもとに自ら同行して患者さんの漢方治療を依頼され、病棟で漢方薬を煎じて投与するという前代未聞の治療を開始されたのでした。
私は全く漢方治療の内容はわからないまま、一緒に経過を観察させていただくことができました。約1年間のこの治療によって患者さんは驚くほどに回復され、この事実を目の当たりにして漢方医学を学ぶ必要性を痛感いたしました。
この出来事がきっかけとなって、石井先生にご同行いただき山本先生の門を叩くこととなり、以後十数年間にわたって山本巌流漢方医学を学ばせていただくことができました。
そして、皮膚科における東西融合治療をライフワークとして現在に至っておりますが、これもひとえに石井先生との接点がなければ全くありえなかったことと常に感謝している次第です。
石井先生が大学を辞められることは非常に寂しい限りですが、今後は開業医として地域医療の現場でこれまでの先生の技量を最大限に発揮され、益々ご健勝にてご活躍されますことを大いに期待いたしております。